コラム記事・研究会レポート

医療塾 第18回「サプリメントの功罪」

2019/04/05
医療塾

医療従事者のための「ホリスティック医療塾」
2018年7月18日(日)於:大阪
◎レポート:愛場 庸雅(日本ホリスティック医学協会理事)

第18回「サプリメントの功罪」

サプリメント(栄養補助食品)は、1兆5千憶円以上の市場といわれ、マスコミやインターネットでは広告があふれています。日本では5000万人以上が利用しており、その目的は、疲労回復、栄養不足を補う、アンチエイジング、目や肌のケア、肩こり・腰痛の改善、といったものが多いようです。が、本当に役に立っているのでしょうか? その利点と問題点を考えてみました。

 Supplementとは、本来「補うもの、補足、付録」という意味で、食事にとって代わるものではありません。法律上は医薬品ではなく、食品に分類されています。
 すなわち、自由に服用できる一方で、医薬品とは異なり、その効果や副作用などについて十分に審査を受けているとは言えません。そこから色々な利点と欠点が生じます。
 肯定的な意見としては、以下のようなものがありました。

・最適な健康を得るためには、栄養のバランスは欠かすことはできないが、現代の食生活では理想の栄養は摂れない。
・多忙な現代人にとって、手軽に飲める。持ち歩くこともできる。
・生活習慣は簡単には変えられない。
・自らチョイスできる。
・適切な診断に基づけば効果を実感できており、QOL改善に役立つ。
・西洋医学的アプローチとしての安心感がある。
・プラシーボ効果もあるだろうが、それも症状改善、満足感につながる。

 一方、問題点としては以下のようなものが挙げられました。

・錠剤やカプセルは全て不自然なものであり、必要な栄養素は本来全て食事からとるべきである。
・しっかりしたエビデンスがないし、その構築も難しい。
・医療関係者に向けての信頼できる情報が不足しているとともに、消費者に対する適切な情報伝達も不足している。
・何をもって有効とするのか? いつまで続けていつ止めるのか?
・過剰症、アレルギー、医薬品・食品・他のサプリメントとの相互作用、などの安全性の問題
・品質管理がメーカーにより異なる
・費用対効果が本当に良いのか? 価格は適正なのか?
・販売方法に問題のあるケースもある
・依存してしまう
・食事や運動などのライフスタイル改善が先にあるべきである
・噛む、味わう、他人とコミュニケーションをとるなど、ゆっくり食事をとることの意義がないがしろにされる。

 ホリスティック医学の視点からは、医療全体の経済を考えた時、補完代替医療の一つのツールとして非常に重要という見方もできますし、一方、栄養素という考え方は要素還元論であり、ホリスティックな全体論とは相入れないのではないかという疑問もあります。
 サプリメントを摂るかどうかはライフスタイルの一つであり、その人の人生観を反映していることになります。それによって病気が治ることへの希望を持てたり、生活が変わるきっかけとなったりすることにも大きな意味があります。
 また、誰から情報をもらって利用するのかという情報発信元のブランド力、言葉を換えれば送り手と受け手の関係性も影響していると思われます。