コラム記事・研究会レポート
自分の健康は自分で守る
2020/04/10
コラム
◎投稿 黒丸 尊治(彦根市立病院緩和ケア科/日本ホリスティック医学協会会長)
自分の健康は自分で守る
私たちは病気になると医者に診てもらい、診断にもとづく薬などで治療してもらうというのが当たり前のように思っています。病気といっても、広範囲にわたるため一括りにはできませんが、ここでは新型コロナウィルス(以下COVID-19)感染症を前提に話をしていきます。
まず、何がウィルス感染症を治すのでしょうか?
答えはいたって単純です。
治すのは私たちの体に備わっている「免疫力」(自然治癒力)です。
今回のケースについて考えるならば、COVID-19というはっきりとした原因があり、これが風邪症状や肺炎を引き起こしています。検査はこの原因を特定し、COVID-19だと診断するための手段になります。ここまではきわめて西洋医学的な視点で物事が進められます。ところが最終目的である治療に関しては、現段階ではその手段を持ち合わせていません。
通常ならば原因を特定したら、それを排除すべき薬があり、それで病気は治ると考えるのですが、COVID-19に関しては、まだその治療手段がないため西洋医学的には手詰まり状態なのです。
そのような状況で「軽症者は家で安静にしていてください」と言われても、連日の報道を見るたび、自分はどうなってしまうのかと恐怖で戸惑ってしまう方もいるでしょう。
このCOVID-19は、罹患しても8割は軽症で自然治癒するといわれています。
しかし、軽症でも病院で第三者(医者)に何かしらの治療(薬の投与)をしてもらわなければ治らないと思い込んでいる人は、過度な不安を覚える傾向があるようです。現段階では治療薬がなく、未知のウィルスであることが一層不安を増幅させているのだと思います。
一方、季節性インフルエンザに対しては、そこまで不安は起こらないと思います。それは抗ウィルス薬という治療手段があるから大丈夫という思いがあるからではないでしょうか。ところがインフルエンザも毎年1,000万人以上の人が感染し、1,000~3,000人の方が亡くなっています。ワクチンや抗ウィルス薬があるにもかかわらずです。
もっともインフルエンザで使用されるタミフルなどの抗ウィルス薬も増殖をある程度抑えるだけのことしかできません。抑制で時間稼ぎをし、あとは免疫力がウィルスを退治してくれるのをひたすら待っているだけです。
さらに言うのであれば、抗菌剤(抗生物質)による治療を必要とする細菌感染による肺炎であったとしても、それで細菌を絶滅させられるわけではなく、できることはある程度まで細菌を少なくすることだけです。抗菌剤で細菌の数が少なくなれば、あとは免疫力が残った細菌を駆逐し、それで肺炎は治癒するのです。
このとき免疫力が働かない場合は、いくら抗菌剤での治療をしても、残念ながら最終的には亡くなられるケースもありますので高齢者や基礎疾患のある方は感染防止が何よりも大切です。
不安をやわらげるために
一般的に、ウィルス感染というものは身体に備わっている免疫力が治療の根本であり、それがしっかりと機能してくれるからこそ治癒するのです。
そのため普段から免疫力を低下させないような日常生活の過ごし方が大切でしょう。
特に、疲労や睡眠不足、ストレスなどの要因は、免疫系の働きを低下させるので注意が必要です。
連日のCOVID-19に関するニュースや多量の情報を受け、気づかぬうちにストレスが積み重なっている人も多いと思います。そんなときは一時的に情報から離れて、テレビやインターネットを見ない時間をつくることも大切です。
自粛と言われ外に出る機会が失われると、人と対話する時間も減少してしまうので、電話で誰かと話しをして自分の気持ちを表現すると少し楽になれるかもしれません。
また、見えないものに対する不安や恐怖があるときは、自分がコントロールできる領域(趣味や自分の好きなこと、日常のルーティン)を保つことも心がけてみてはいかがでしょうか。巣ごもり生活で動かないと心身の機能が低下してしまうので、適度な運動もお勧めです。
この機会に、病気を治す基本は「免疫力」であるという事実を多くの方が自覚し「自分の健康は自分で守る」という意識が高まることを願っています。
そして、ウィルス感染拡大を防ぐためには、だれもが当事者意識を持って行動することがとても重要であることは、いうまでもありません。こんな時だからこそ、他者への思いやりといたわりの気持ちを大切にしてほしいと思います。
黒丸 尊治(日本ホリスティック医学協会会長)
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