コラム記事・研究会レポート
高齢者の運動
2010/04/17
運動、身体活動
高齢者の運動
平均寿命が男性77歳、女性が84歳である高齢化社会
一般的に65歳以上を指す「高齢者」にとっては、いつまでも日常生活で自立でき、意欲的に活動できる体力を維持していくことが必要です。
加齢に伴い体力、各機能が停滞、低下していくことは否定できません。体力の低下によって、少し外出するだけで疲れるようになると、人間は活動量を減らすことで体力の消耗を抑えて健康維持に努めるという消極的な健康行動を取りがちです。
しかし、それは身体を使わなくなるということでもあり、筋・神経・心臓といった身体の諸機能をさらに低下させることになってしまい、健康維持のためには、適当な行動とは言えないでしょう。やはり何歳になっても積極的な日常活動と適度な運動を続け、身体の諸機能を刺激することが健康な人生を過ごすためには必要なのです。
ただし、高齢になるほど、体力、健康状態、運動経験などの個人差が大きいので、運動に際してはそれを自覚する必要があり、運動生理学の教科書にある年齢別の運動プログラムを安易に受け入れることは適切でないこともあります。
また、高齢者の身体能力には若い力と変わらない部分と自然に衰えてしまった部分とが混在しているため、運動レベルを強い部分に合わせてしまうと、バランスが取れずにケガをする原因にもなるため、注意が必要です。
顕著に衰える部分は大腿部や下腿部の筋力
歩行が困難になったり、正しい姿勢が維持できなくなり腰痛などが発症したりもします。
これらの筋肉の衰えを防ぐ運動として、椅子などに座っている状態から立ちがる、階段をゆっくり昇る、坂道を昇ったり下ったりなど、自分の体重負荷でゆっくりと移動する運動が効果的です。
高齢者は特に瞬発力(瞬発筋力)の低下傾向が著しいため、爆発的、敏捷的な運動は不適当であることも知っておきましょう。
また、よく問題となる「骨粗鬆症」を生活習慣病の改善により予防するためには、食事、日光浴などのアプローチもありますが、これらに比べて運動はさらに確実、効果的で最も有効です。運動(骨に対する運動負荷)による効果は骨内血流が増加し、骨吸収を抑制し、骨芽細胞の活性化をもたらせることも明らかになっていて、運動による効果は薬剤の効果に匹敵するほどでもあると言われています。
しかし、加齢により骨が弱くなるの当たり前であって、ある程度は仕方がありません。ただし、その場合の問題としては、骨が弱いということよりも、転倒して骨折するということに着目しなくてはならないのです。転倒しないようなバランス感覚、平衡性とそれに関わる筋力が必要なのです。高齢者の自立には筋力とバランス機能が欠かすことができないと言われるのは、そのためです。
高齢者の重心動揺は若年者に比べて2~3倍も大きく、重心動揺に対して立位を保持できる範囲は若年者の1/9と言われています。
歩いたり、立ち上がったり、坐ったりする場合には身体のバランス機能がしっかり働かなくてはなりませんから、それらの動作を行うことでバランス機能を刺激して、その機能の低下を予防することになります。
また、姿勢を維持したり、歩いたりする日常活動は重力に抵抗することで、そのためには筋力が働きますから、筋肉刺激を与えることであり、その機能を維持、向上させることにもなります。
高齢者の場合、積極的な日常活動をすることと、そして若年者と同じように運動することは無理であっても、体調、気候条件などに留意し、歩行、ゆっくりジョギング、ゆっくり泳ぐなど、有酸素的な全身運動を中心に、運動中に苦しくなく、翌日に疲労や痛みが出ない範囲で、楽しみながら継続できる運動を選択することが大切です。
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