コラム記事・研究会レポート
何をどのように食べるか
2010/03/31
食養生
何をどのように食べるか
食養生で大事なことは、「何を」「どのように」食べるかです。
まず「何を」から考えてみましょう。
(1) その季節、その土地でとれた食物
食物は単に栄養素だけでなく、いのちを繋ぐ生命エネルギーの源です。私たちの身体と食物の関係には、ある一定の平衡性・協調性が存在します。つまり、大地の生命場と私たちの身体の生命場はつながっているのです(「身土不二」)。ですから、自分が住んでいる土地で、季節に合う、旬にとれた食物が、人の体にもやさしいことは言うまでもありません。
(2) 植物性の食物
人類の本来の食性は、植物性、いわゆる穀物菜食が中心であったと考えられています。人類の歯は、門歯が8本、犬歯が4本、臼歯が20本、つまり2対1対5の割合になっています。合目的の原則からいえば、この歯の構成比率が人類の食性を示すことは間違いありません。このような事実から考えますと、果物&野菜と肉類と穀物の摂取比率は、2対1対5の割合が理想だということになります。(もちろん、それぞれの気候風土に応じた伝統的な食文化も尊重したいものです)。 動物性の食物に関しては、日本人はこの半世紀で2倍以上の消費となっています。しかし、肉類に関しては、遠方からの輸入、生産過程での化学物質の混入など、すべからく悪影響も懸念されています。そうした点を踏まえると、やはり動物性のものは少なめに、植物性のものを中心とするほうがベターであるといえます。まるごと食べられる野菜などは、できれば全体をまるごと食べるのがよいでしょう(「一物全体」)。
(3) できるだけ自然な食物を
農薬や化学肥料、添加物などを多量に使った食品や加工食品は、体内の動的平衡を狂わせる恐れがあります。できるだけ、減(無)農薬、有機肥料、オーガニックなどの自然に近い食物をとるように心がけたいものです。工業生産的でなく、自然に近いかたちで育った食品は、それなりに大地のエネルギーも多く残っているはず。逆にいえば、腐らないようにするための防腐剤や変色を防止するために加えられた化学物質を含む食品が、体に良いはずがありません。そもそも食べものは放置すれば、すぐに腐ったり変質してしまいます。食品とは元来そうしたものです。 現代人の食に関する意識は、安全・安心と言いながらも、外見ばかりを気にしすぎる傾向が強いようです。自然なものを、わざわざ不自然にして食べなければならない理由は、どこか食の本来の目的を見失っているよう思えてなりません。
(4) 作る人の思いがこもった食物
食には生産者と消費者のみならず、調理をする人、場所や雰囲気のコーディネートをする人など、そこには多くの人の創意工夫があります。「安心して食べていただける」「おいしくつくる」「手作りの食感を出す」そのような食物を提供する側の思いは、味にも、食べてもらう人の元気にも反映されることうけあいです。
(5) 免疫力を高める食物
世界の長寿郷の人々が、その土地ならではの伝統的な発酵食品を常食していることからもわかるように、三大または五大栄養素だけが人間の健康に寄与しているのではありません。ミネラルを多く含んだ水や酵素食品、食物性繊維なども免疫力と深い関わりがあることがわかっています。 免疫力を高める食材には、きのこ類、海藻類、緑黄色野菜、緑茶、魚油ほか、ムコ多糖類を多く含む食品群、ビタミンCやビタミンEなどを含む抗酸化力のある食品群があげられます。
■旬の食べものを知る (旬の作物と食べ方の知恵)
(春)
春の野草といえば、うど、わらび、ぜんまい、せり、ふき、そして他の七草など。緑色が濃く、アクの強いものが多い。昔から「春には苦いものを食べよ」といわれます。苦味成分の代表はアルカロイドで、冬の間に溜まった体内老廃物を排泄する作用も期待できます。生で食べるのには不向きで、加熱調理が必要です。
(夏)
育ちが早く、水分量の多い野菜が市場に出回ります。トマト、きゅうり、うり、すいか、メロンなど。生で食べてもおいしい野菜や果物が多くなります。
(秋)
実りの季節と呼ばれるように、米など主食作物の収穫時期です。また、さつまいも、里芋、ヤマノイモなどの芋類、栗、ぎんなん、きのこ類なども採れます。天日干し、塩蔵品などの保存食の準備も増える時期です。自然環境下では食糧の少なくなる冬を越すために、食欲を増して体力とエネルギーを温存する季節といえます。
(冬)
大根、にんじん、れんこん、ごぼう、ねぎなど、温めて食べる根菜が多くなります。体が温まる食品、体を温める調理法が主になります。
こうしてみると、野菜の調理法にも、みごとに旬があることがわかります。それは、日本人の体に合った食べ方であり、日本人の体にも季節があるということではないでしょうか。
人間が植物と同じ気候風土の中で生活するというのは、こういうことなのです。
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