コラム記事・研究会レポート
エネルギー医学の現状と展望~「エネルギー医学研究会」のめざすもの
2020/05/10
研究会
ワイル博士が「21世紀はエネルギー医学の時代」と発言
「エネルギー医学」といえば、何となく「エネルギーを用いる医学・医療」というものだと思い浮かべることはできると思いますが、人によってかなり異なる認識、イメージを持っているのではないかと思います。
そして「ホリスティック医学」=「エネルギー医学」というわけではないのですが、この両者はかなりつながりがあるものといえます。その1つの象徴的なできごとを挙げましょう。上野圭一氏が翻訳されたことで、あまねく知られるようになったアンドルー・ワイル博士が1990年代に来日され、協会の各地のシンポジウムに登壇された際に「21世紀はエネルギー医学の時代である」と発言されています。
ワイル博士は現代医学だけではなく、食生活、運動、心の持ち方やメディカルハーブの用い方など、いわゆる自然療法も含めた医療を提案されていたことで有名でしたが、もっとも強調されたのが「エネルギー医学」という言葉でした。
鮮明に覚えている理由は、その場に居合わせたときには、ちょっと予想外、想定外の発言だったからでした。率直に言うと「お祭り的な場なので、盛り上げることも考えて多少センセーショナルなことをおっしゃっているのだろう」と思ったくらい、印象に残ったことを覚えています。
しかし、ワイル博士の著書を振り返ってみると、本格的なデビュー作である『人はなぜ治るのか』の巻頭には「ホメオパシー」体験が書かれており、渾身の力作の『癒す心 治る力』では、オステオパシーという手技療法の中でもエネルギー療法的な「頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル)」体験が紹介されています。
そして、必ず目に見えない「スピリット」の健康への影響についても言及されており、『癒す心 治る力』には、ご自分が顔面の毛包炎になった際に遠隔治療という、まさにエネルギー・ヒーリングを受けた体験も書かれているのです!
世界のオピニオン・リーダーであるワイル博士は、当然ホリスティックな医学観、つまり「ボディ-マインド-スピリット」の視点を持っていますが、実は当初から「エネルギー医学」に対して、かなり評価していたのだということになります。
とはいえ、大学の中で教鞭を取っている身ですので、あまり前衛的すぎるわけにもいかない面もあったはずです。そんなワイル博士が強く推していたのが、1988年に出版された若き医師リチャード・ガーバーの著作『バイブレーショナル・メディスン』でした。上野氏には、ワイル博士をはじめ多くの海外のホリスティックドクターたちから「ガーバーはすごい。なぜ翻訳しないんだ」と言われていたという逸話があります。
研究会発足のきっかけは『バイブレーショナル・メディスン』
日本で『バイブレーショナル・メディスン』の翻訳が出るのにはしばらく時を要し、出版されたのはようやく2000年になってからでした。今まではエネルギー医学に関する本や情報は、どうしても論理性が欠けていたり、曖昧なものが多かったため、怪しさがぬぐえなかった面がありましたが、この本の影響はすごいものがありました。
ガーバーは医師なので医学的な記述がしっかりしているうえ、珍しい、目に見えない種々のエネルギー療法について、体系的に解説してくれていたのです。その影響力の象徴的な1コマとして挙げられるのが、現代医学を超えた方向に関心を持つようになった医学者や教授たちが、その根拠の文献としてこの書籍を引用する姿があちこちで見られたことです。
ちょうど同じ頃に、やはり医学者のジェームズ・L・オシュマンが著した『エネルギー医学の原理その科学的根拠』(2004年刊行・絶版)も翻訳されたことによって、さらに学術的な機運が高まるようになったのです。
そんななか2007年に当協会の20周年シンポジウムに際し、通常の医学以外のいろいろな関連領域とネットワークを組む流れとして「ホリスティック・ネットワーク」という動きが生じ、その一環として2010年に発足したのが、エネルギー医学をテーマにした「スピリチュアリティ&エネルギーケアネットワーク(スピエネット)」という活動でした。
「エネルギー医学・療法」の種類
ひと口に「エネルギー医学」といっても、現在ではいろいろな種類が存在しています。大きくは次のような4つに分類できるでしょう。
① ハンズオン型
タッチ、手かざしなど、いわゆる「手(ハンド)」を用いて、患者の気やエネルギーを調整する療法です。いわゆる「ヒーリング」とか「気功」といわれているものが該当し、多くの種類があります。何も物質を用いないために分かりにくい面があり、感じやすい人と感じにくい人もいるなど、個人差も見られます。
細かくは、身体に触れて行うタイプと、触れずに少し離れたところから(数㎝から数10㎝くらい)行うタイプがあります。
② レメディ型
ホメオパシーやフラワーエッセンスやいわゆる波動水のように、口から「エネルギーの媒体」(レメディ)を摂取する療法です。
「物体」か「水」など、口から摂取する形のあるものでありながら、その本質は「エネルギー」であることから、理解しづらい面もありますが、①のハンズオン型はまったく何も物質を用いないのに対して、何らかの物体を摂取することは分かりやすいともいえます。
ホメオパシーやフラワーエッセンスは、実際の植物や鉱物などを用いてレメディを作成しますが、波動水は、実際の物質を用いずに、その植物や鉱物の周波数などを水に入力して用いています。
③ 色、振動型
「色」を経絡、経穴に当てたり、「音叉」などで振動を与えたりして、気やエネルギーを調整する方法です。
「色」は可視光線という周波数領域にあり、赤色の少し外に位置する赤外線や遠赤外線は、いろいろな治療器に用いられています。また「音」は「音響量子(フォノン)」、「音波」などがさまざまに活用されています。
④ デヴァイス(機器)型
これは、いわゆる機器(デヴァイス)を使って気やエネルギーを調整する療法で、いくつかのタイプがあります。
■周波数系機器~周波数を調整する機器
身体のいろいろな組織には固有の周波数があることが分かっており、その周波数を用いたものなので、メカニズムも分かりやすいものです。 最近では、症状・状態と部位の2つの周波数を用いて、より効果を上げている米国のカイロプラクティック医師キャロリン・マクマーキンのFSM(Frequency Specific Microcurrent)という方法も出てきています。パッドをあてて周波数を送る形式が多いようです。
■それ以外の機器
打診法の名手だったアブラハム・エイブラムス医師が開発したラジオニクス系機器、『水からの伝言』を書いた故・江本勝氏が普及したMRA(Magnetic Resonance Analyzer共鳴地場分析器)、乱数発生器系機器など多くの種類がありますが、周波数系機器に比べて、メカニズムがよく分からないため、評価がさまざまです。治療としては、水やレメディとして飲用するものも見られます。
「エネルギー」と「情報」の違いとは
NHKのシリーズ「人体」の第2弾のキーワードは「メッセージ物質」でした。平たくいえば「体のすべての臓器はお互いに対話している」ということで、実際に「対話の物質(メッセージ物質)」を介してなされているのが分かってきた、というものでした。
しかし、この「メッセージ物質」という言葉は考えさせられます。前半の「メッセージ」とは、「情報」というものを重視していますので、最近のエネルギー医学で「エネルギーが情報として体中を伝わる」という視点と重なり、いいところにポイントを置いていました。エネルギー医学の領域でも、この「情報」を中心にすることを明確化した表記として「情報医療」といういい方を大事にする流れもあるのです。
人体では「物質」レベルの伝達の仕方やスピードでは説明のつかない「情報伝達」、たとえば、羽生結弦選手の精度の高い4回転ジャンプのような動きなどは、物質の伝達の仕方、スピードでは難しいとされています。
最近になって、それを説明できる「生体マトリックス」という、体の中に電子や陽子などによるエネルギー的な高速の情報伝達システムがあることを、先述したオシュマン博士が提唱しています(『エネルギー医学の原理』エンタプライズ刊)。
エネルギー医学と情報医療がどのように違うのかについて、エネルギー機器の実践家の寺岡里紗氏は次のように説明しています。
・「エネルギー」レベル:肉体にエネルギーを供給するレベル。経絡、経穴、チャクラ、気、オーラ、プラーナのレベル
・「情報」レベル:精神、意識、神性、霊性(スピリチュアリティ)
つまり「情報」のほうが深い、高いレベルになっており、「設計図」的な位置づけになっているようです。このため「エネルギーの視点」からの治療が、ダイレクトに身体に作用する傾向に対して、「情報の視点」からの治療は、より根本の設計図を調整・修正する方向に作用すると考えられているようです。
エネルギー医学の「ブラックボックス」の追究
重要な面がありながら、エネルギー医学がなかなか本格的な進展がみられないのは、まだまだ解明できていないブラックボックスが多いためでもあります。
工学博士の天外伺朗氏は「現在のエネルギー医学のメカニズムを、電磁気や電子、光子などの素粒子だけで説明するのは無理である」として、「気」エネルギーの考え方を提唱しています。
天外氏は「気」エネルギーについて次の表のように説明しています。
これまで物理学では表にあるように、1~4までの「4つの力」が見つかっているので、エネルギー療法の力についても何とかこの4つの力で説明しようとしてきたわけですが、天外氏は前述の見解から、別の新しい「第5の力」である「気」エネルギーによるものと考えられるとしています。
そして、エネルギー医学の原理を理解するためには、量子論、量子力学の視点が必要といわれます。しかし、エネルギー医学の原理をいきなり物体の領域の「量子物理学」におくのは誤りとされ、生物の領域に量子現象が生じている「量子生物学」という領域が待たれていたのですが、よくやく最近10年くらいの間に飛躍的に発展してきています。
少し細かくこのあたりを検討すると図のような関連性があります。物理と生物の間には、「量子化学」と「量子生化学」の間の溝を埋めることが必要であり、まさにその溝を埋める働きをしているのが「量子生物学」なのです。
「エネルギー医学研究会」では、今後も真摯に追究する姿勢を大事にし、活動を続けていく所存ですので、関心を持っていただければ幸いです。
◎文・エネルギー医学研究会・世話人代表 降矢 英成
『HOLISTIC MAGAZINE 2020』より
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