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統合医療とホリスティック

2012/03/31
コラム > ホリスティック医療塾

当協会理事 山本竜隆 著 『統合医療のすすめ』(東京堂出版)より
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 統合医療とは、現代西洋医学と、現代西洋医学のシステムや方法論だけでなく、東洋医学やさまざまな相補・代替医療のシステムや療法を、積極的に取り入れて、個々の患者に合わせて統合的な治療とケアをしていこうという医療のことを指します。  そして、ここでいう「統合」とは、単なる寄せ集めではなく「いくつかのものを一つにまとめて再構築すること」であり、「全体として一筋のつながりをもたせる」ことです。

 もちろん、これまでの医学のように、患者の心身の状態を可能な限り正確に診断することが前提ですが、患者がどのような健康観や人生観をもち、どのような治療を望んでいるか、または望んでいないかを的確につかみ、且つ個々に最適な医療を提供することが、統合医療のあるべき姿といえるでしょう。

 現代社会において病院経営を行う以上、ある程度の効率化はやむを得ないとしても、従来どおりの医療システムでは、疾病の予防や健康維持、さらには、プライマリー・ヘルス・ケア(全人的医療、包括医療)などを望む患者や健康生活者の多様なニーズに応えられないも現実です。 多くの医療消費者たちは、検査漬け、薬漬けの現状に不満をつのらせ、「単に”病気”だけを診るのではなく、病を抱えた”人間そのもの”を見てくれる医師」を強く求めはじめています。 そのためには、医療従事者がホリスティックな健康観をもち、代替医療についての一定の見識をもっておくことが必要不可欠です。

 代替医療は、西洋医学と比べて次のような特徴をもっています。

(1)自然治癒力の向上を目指す
(2)ライフスタイルの改善を促す
(3)個人差を重視し個別的な有効性を評価する

 これまでの科学や医学は、ものごとを細かな要素や機能に還元し、生命現象までも分割・分離してきました。その結果、私たちの健康や生活環境、社会の仕組みまでも縦割りに分断され、全体としてのつながりや働き(相互作用)が極めて見えにくくなってしまっています。それが結果的にさまざまなストレス要因となって、私たちの自然治癒力を弱めているともいえます。

 かつて、WHO(世界保健機関)でも「健康とは、身体的、精神的ならびに社会的に完全に良好な状態であり、単に病気や虚弱でないことに留まるものではない」という従来の定義の中に、「スピリチュアリティ(霊性)」という概念を加えるべきだとの意見が出された経緯があります。 心と体、そして魂の問題まで含んだホリスティックな健康観に立脚してこそ、痛みや苦しみといった検査結果にあらわれない要素や死生観などの患者にとって切実な要望を読み取ることができるのです。

 要するに、統合医療においては、医療従事者がホリスティックな視点(健康観・医療観)や理念をもっていることが前提となるということです。

 統合医療とは、「ホリスティックな観点に立ち、これまでの現代西洋医学と非西洋医学・医療の中から、個々の患者にとって最適な治療法を用いて、治療・予防・QOLの向上に向けて統合的にアプローチする医療」です。 そして、これを一言で表現するなら、「個々の機能を最大限に発揮することによって、全体性のバランス(有機的なつながり)を回復させる」ことであり、個人・地域社会・国家・地球全体の各レベルにおける”ホリスティックな健康”を取り戻すことこそが、統合医療の目的であり、今日的な意義だともいえるでしょう。